2012年9月8日土曜日

マゲシカのレッドリスト掲載について(付記)

ちょっと詳しい方は,次のような疑問を持たれると思いますので,見解を記しておきます。

①マゲシカはニホンジカの亜種(Cervus nippon mageshimae)なのに,リストには「馬毛島のニホンジカ(Cervus nippon)としか書かれていないのはなぜ?

→具体的な議論内容は不明ですが,簡単に言えば,マゲシカが(エゾシカなどと較べて)マイナー亜種であり,”種子島のシカ”という分類学的に厄介な存在があるからだと思われます。種子島のシカは遺伝学的には馬毛島のシカに極めて近く,近年は両島ともマゲシカと表示されることが多いですが,しかし両者の関係は十分には検討されておらず,しかも種子島のシカには古いながら複数亜種交雑説もあります。「馬毛島のマゲシカ(Cervus nippon mageshimae)」もしくは「マゲシカ(Cervus nippon mageshimae)の馬毛島個体群」と表記すればよさそうなものですが,亜種分類や分布域が確定していないという理由でそうならなかったのでしょう。しかし,マゲシカという亜種自体は(例えばツシマジカやエゾシカよりも)亜種とする遺伝学的根拠は明快(基亜種であるキュウシュウジカとの遺伝的距離)です。早めに「馬毛島のマゲシカ(Cervus nippon mageshimae)」と修正していただきたいものです(もちろん亜種かどうかだけでなく,各地域の自然分布個体群が維持されることが重要です)。

②LPって”おまけ”なの?

→これを知ってる方はかなりの”通”です(^^;)。カテゴリー「LP」は,実は「付属資料」です(「付属資料・絶滅のおそれのある地域個体群」が正式なカテゴリー名)。でもこれは絶滅のおそれが実は小さいとか,そういう実質的な違いがあるからではなく,根拠となる法律(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」,略称「種の保存法」)が,(地域個体群でなく)種または亜種を単位としているからです。
 しかし実際には地域個体群こそが野生動物保全・管理の基本単位であり,近年は,保全の指標としても(レッドデータブックやレッドリストなど),管理実務の点でも(特定鳥獣保護管理計画制度など)地域個体群を単位に議論することが一般的です。種の絶滅の前段階として地域個体群の絶滅(地域絶滅)があるわけですから当然と言えるでしょう。
 しかもマゲシカは亜種です。①のような事情?でそこが曖昧なままレッドリスト掲載となってしまいましたが,今後は亜種「マゲシカ」の分布域を確定し,それにもとづいた表記に修正する必要があるでしょう。つまり,
・種子島個体群もマゲシカで絶滅のおそれがない
      →LPに「マゲシカ馬毛島個体群」をリスティング
・種子島個体群もマゲシカで絶滅のおそれがある,もしくは,種子島個体群はマゲシカではない   →「マゲシカ(C. n. mageshimae)」を絶滅危惧種にリスティング
ということになります。

*こう考えると「馬毛島のニホンジカ(Cervus nippon)」という表記がなにやらきな臭い匂いもしないではありませんが,まあ,あくまで客観的に議論してゆきましょう(^^;)。

参考:
種の保存法(本文)
種の保存法の解説
日本のレッドデータ検索システム

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